2023年9月11日 8:00:00 JST
福音の冒頭で、ペトロが知りたかったのは、隣人を何回赦すべきかということでした。この質問に対する御子は、「あなたが考えているよりも頻繁に赦しなさい」とお答えになりました。こんにちの私たちキリスト者にとっては、至極当然ですが、果たしてそうでしょうか。
イエス様はあの有名な「七の七十倍」という、もったいぶった表現でお答えになっただけでなく、対照的な関係を含めたたとえ話で全体を説明されました。ある王が、1万タラント（銀貨1万枚分）という多額の金を家来に貸していました。
「そこで、天の国は、ある王が家来たちと清算をしようとしたのに似ている。清算が始まると、一万タラントン借金している家来が、王の前に連れて来られた」（マタ18：23－24）。
今のお金で計算すると、何百万ドル〔日本円で1億5000万円くらい？〕にもなります。当時の典型的な帆船の値段は1タラントン程度でした。つまり、帳消しになった借金は1万隻の船団に相当するわけです! なんという取引でしょう! 運は家来に味方したのです。こうも素晴らしい人生になり得るのです。王はすべての借金を帳消しにしてしまったのです!
しかし、この家来は理不尽にも、残酷な人でした。彼には金を借りている仲間の家来がいました。「ところが、この家来は外に出て、百デナリオン貸している仲間の一人に出会うと、捕まえて首を絞め、『借金を返せ』と言った」（マタ18：28－30）。
実に対照的です。王は身振り一つですべての借金を免除したのに対し、いわゆる残酷な家来の振る舞いは容赦なく冷酷でした。彼は、気の毒な同僚の借金を1デナリオンたりとも帳消しにするのを拒んだのです。
天の国の秘義
マタイによる福音書18章は天国の秘義を扱っています。根本的な事柄に関することです。文脈は地上のことですが、解釈はそうでなく、永遠に救いに関することが趣旨です。そして、何回隣人を赦すべきかについて質問したペトロは、イエス様がこのたとえ話をなさった時、きっと信じられない思いでイエス様を見つめていたことでしょう! 王はすべてを赦し、家来は一切赦しませんでした! 赦してもらった家来は憐れみを示そうとしなかったのです!
イエス様は、この赦しに関する考え方を、私たちキリスト者に向けて述べておられるのです。イエス様は、包括的に赦そうとすることの必要性を強く主張しておられます。結局のところ、私たちが主の祈りで「我らに罪を犯す者を、我らが赦す如く、我らの罪をも赦し給え」と祈る通りです。これは、安らぎのうち、憐れみ深い神様の懐に抱かれるものが、半分でしかないということです。赦しは、他者を赦す人にもたらされるのです!
赦すことは難しい
赦し合うことは、易しくありません。古傷を引き裂くような不快な言葉など、私たちが動揺することはたくさんあります。私たちは皆、デリケートな部分を持っています。侮辱されたことによって、生涯にわたって相手を恨み続け、その過程で自分自身が病気になってしまう人がいます。赦すことが習慣化していれば、不和、対立、利己、戦争は存在しないのです! 夫婦、親子、信徒間、会衆、社会、政治など、対人関係においてはなおさらです。
神様はご自身の義を憐れみと結び付けておられますが、人間は自らを正義に限定します。しかし、人生のすべてが裁きで解決できるわけでないことを、私たちはよく知っています。巨額の借金の帳消しは、正義の行為ではなく、憐れみの行為だったのです。
憐れみは数学を凌駕する
実際、ペトロの問いかけはごく短いものでした。「主よ、きょうだいが私に対して罪を犯したなら、何回赦すべきでしょうか。七回までですか。」たとえ話でペトロは理解できたでしょうか。「我らに罪を犯す者を、我らが赦す如く、我らの罪をも赦し給え」との祈りが、より深く理解できるでしょうか。それとも、自分の欠点には目をつぶり、私たちの姉妹や兄弟のあらばかり見るのでしょうか。
私たちは以下のことを学ぶべきです。
- 神様の御前では、私たちの借金があまりに大きく、自分自身では返済できません。もしイエス様がおいでくださらなかったら、私たちの救いは霊的に破綻していたでしょう。イエス様が十字架上で自らの命を献げることによって、すべての罪を償還してくださったのです。
- 神様はただの一つも、天国へ入るのを容認なさいません。しかし、罪人、すなわち赦された罪人が入ることは認めてくださいます。これはキリスト者としての私たちのチャンスです。イエス・キリストを信じて、罪と罪責から赦免されることによって、私たちは自由になるのです。些末な数学から自らを解放する者たちが、この自由を獲得するのです。
原著: Peter Johanning
https://nac.today/en/158033/1217931￫
nac.today: New Apostolic Church International
