2023年9月18日 0:00:00 JST

彼女は女性であり、もともとは異邦人であったにもかかわらず、イエス様の家系図に名前があります。もしルツが慣習を破らなかったら、すべてが違っていたでしょう。

 

 

「あなたが行かれる所に私は行き/あなたがとどまる所に私はとどまります。/あなたの民は私の民/あなたの神は私の神です。あなたが死なれる所で私は死に/そこに葬られたいのです。/死に別れでなく、私があなたと別れるならば/主が幾重にも私を罰してくださいますように。」私の名がついている聖書の書物から引用されたこの言葉は、三千年後、夫婦に人気の聖句となりました。私はこの約束を ― ちなみに、二度結婚していますが ―夫にではなく、義理の母にしました。

 

 

士師の時代の女性たち

私の最初の夫の名前はマフロンと言い、イスラエルの民でした。私たちが出会ったのは、彼の出身地ベツレヘムで飢饉が起こり、彼の母ナオミ、父エリメレク、弟キルヨンと一緒に経済移民として私の住むモアブに来た時でした。マフロン家族はモアブで生活を良くしたいと思っていました。ところがそれから間もなく、キルヨンが亡くなりオルパと私は未亡人となりました。

 

義理のお母さんであるナオミさんは自分の国に帰ろうと考えました。私の故郷では、夫も息子もいない女性というのは多くの権利もなく、まったくの無防備でした。イスラエルでもそうでしたが、少なくともナオミお母さんには知り合いがいました。ナオミお母さんは私たちに、自分たちの母親がいるモアブに残り、そこで再婚するよう説得しようとしました。「自分が新たに男子を産むには年を取りすぎているし、産んだとしても、年齢的に成長してオルパと私を養い切れない」と自嘲気味に話しました。ここで私は、生き残った兄弟の結婚の義務というユダヤの掟を知りました。

 

申命記25章5節から10節によれば、男性が後継の男子をもうけずに亡くなった場合、残された死亡男性の弟は兄の未亡人と結婚しなければならない、とされています。イスラエルにおいて、この結婚で生まれた長男は、死亡男性の息子とみなされ、その血統が続くことになるのです。

 

 

女性たちを苦しめる貧困

オルパはナオミお母さんの言うことを受け入れましたが、私はナオミお母さんと一緒に行き、一緒に暮らすことに決めて、例の有名になった誓いを立てました。私はナオミお母さんに、お母さんの神様が自分の神様となると言いました。私は神様のことをほとんど知りませんでしたが、もうすっかり信頼を寄せていました。長い道のりの末ベツレヘムに着いて、私たちは貧困に苦しみました。ナオミお母さんはもはや「愛らしい者」と呼ばれるのを望まず、「苦しむ者」を意味するマラと呼ばれることを望んだ。私はイスラエルの民を見て、すぐにわかりました。例えば、律法の様々な箇所(出22:20-26、レビ19:9、申24:19-25)から、貧しい人々に寛大でなければならないという律法を学びました。そこには、貧しい人、寄留者、寡婦、孤児は神様から特別に保護され、畑で穀物を集めることが許されると書かれているのです。私はナオミお母さんにそのことを教えて、畑に出て、労働者たちの後ろを歩き、貧しい人々のために残していった穀物の穂先を拾いました。

 

偶然、私はボアズという人の畑にいました。私はすぐに彼の目に留まりました。ボアズさんは私の真面目さと良い評判を気に入ったようです。彼は私に、穀物が収穫できる場所を教えてくれました。食べ物と水、それから穀物の束をいくつも置いていってくれました。律法で定められている以上のものをくれたのです。

 

 

生活が良くなって

ボアズさんがしてくれたことをナオミお母さんに話すと、お母さんはレビ記25章25~28節に書いてある、土地を買い戻してもらう権利について説明してくれました。これは、貧しくなったイスラエル人の財産を最も近い男系の親族が買い戻す、例えば畑を親戚の家に残すことができる、というものです。

 

ナオミお母さんはある計画を思いついた。私もその計画が気に入りました。私はボアズさんの畑で、冬を越すのに十分な量の穀物を集め続けました。収穫が終わると、すべてを脱穀場に納め、ボアズさんとその労働者たちは脱穀場で一泊しました。夜、私は一番良い服を着て、ボアズさんの足もとで寝ました。彼が目を覚ますと、私は彼に、あなたは近親者だからナオミお母さんのご主人が所有していた土地を買い戻す権利があるということを話しました。ボアズさんもそのことをすでに考えていました。そしてまた私のことを褒めてくれました。私は、気付かれないように脱穀場を出ました。ボアズさんが私の評判を気にしていたからです。彼はさらに大麦をくれたので、私はそれを持ってナオミお母さんのもとに戻り、事態の成り行きを見守りました。

 

 

めでたしめでたし

その後、ボアズさんは私の夫になる時に「遺産を買い戻す権利があるもう一人の近親者に、町の門で会った」と私に言いました。当時は、長老たちを証人として法的な問題を解決する習慣がありました。もう一人の男性は土地の買い戻しには興味があったものの、幸いにも私と結婚することには興味がありませんでした。

 

こうしてボアズさんは私と結婚して、私とナオミお母さんのために息子オベドをもうけました。オベドはやがてダビデの祖父となり、あのイエスの先祖となります。

 

この家系図には43人の男性が記されていますが、女性は、私を除いて3人しかいません。その3人とは、イエスの母マリア、ダビデの息子(ソロモン)を産んだウリヤの妻バト・シェバ、そして家族の一員としての地位を確保するためにユダを騙して孕ませたタマルです。後にドイツの神学者は、イエスの子孫についてこう述べています。「ユダヤ教における約束についての歴史は、このような型破りな女性たちがいなかったら、成就しなくなってしまうだろう。」

 

 

慈善活動を増やすための物語

私の物語は、命に優しい律法解釈を語っています。私の物語は、申命記23章3~7節の、外国人を敵とみなす律法に反する政治的主張として読むことができます。つまるところ、この物語全体が帰結する国王ダビデもまた、私の子孫であり、私の子孫ということは外国にルーツを持つ王なのです。律法は、モアブ人をイスラエルの会衆に受け入れることの禁止を正当としています。その理由は、私の母の先祖がイスラエルの民に砂漠を行く途中で水を与えなかったからです。ナオミお母さんとその家族は、難民として私たちのところにやって来ましたが、手厚く世話されて、溶け込むことができました。ボアズさんと結婚してオベドをもうけたことによって、私もイスラエル社会に完全に溶け込めたのです。

 

私の名前はルツ。「友」という意味もあります。

 

原著: Katrin Löwen

https://nac.today/en/158033/1218266→

nac.today: New Apostolic Church International

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