7 教役職<教職>

441 使徒に与えられている重要な職務として、他にどのようなものがありますか。


使徒には、キリストが彼らの中で活動され、死なれ、死者のうちから蘇(よみがえ)られたことを宣べ伝えるという、重要な職務があります(使徒13: 26-41; 17: 1-4参照)。彼らは、キリストの働きや死と復活を否定しようとする異端の考えに対抗しました(一コリ15: 3-9参照; 一ヨハ4: 1-6参照)。

442 すでに当時の使徒たちは伝道活動をしていましたが、その一番の目的として、彼らは何を待望していましたか。


すでに当時の使徒たちは彼らの生涯をかけて、キリストの再臨を待望し、信徒をそれに備えさせていました(一テサ4:14-19参照)。使徒職は、キリストの再臨を宣べ伝えることと、そのための準備を会衆にさせることが、その本質にあります。

443 使徒職から生まれた最初の教役者は何ですか。


使徒たちはペンテコステを皮切りに、職務の遂行や福音の宣教に着手しました。すると、まもなく、補佐役が必要となってきました。そこで七名を補佐役として選びました。使徒たちはこの七名が奉仕するための準備として、祈り、按手(あんしゅ)をし、祝福をしました。この七名が初代の執事です。

「[この人たちを]使徒たちの前に立たせた。使徒たちは、祈って彼らの上に手を置いた。」 使徒6: 6

444 当時の使徒たちによるこの行為は、どういう結果をもたらしましたか。


当時の使徒たちのこの行為をきっかけとして、叙任を行う際は、按手(あんしゅ)と祈りが必要となりました。

445 使徒職から生まれた教役者の職務は、他にありますか。


はい。使徒や他の信徒たちが新しい教会を造ると、会衆の世話をする教役者も新たに必要となりました。そこで使徒たちは、「監督」「長老」と呼ばれる、会衆の指導者を叙任しました。キリストの教会が設立された時期には、預言者、福音宣教者、牧者、教師という職務も存在しました(エフェソ4:11参照)。

446 初代の使徒たちがいなくなった後、会衆への牧会はどのように行われましたか。


初代の使徒たちがいなくなった後、様々な任務や役目を持った教役者が多く生まれました。会衆に属す者たちへの牧会は、こうした者たちを通じて行われました。


教役者:問418→以降を参照

447 初代の使徒たちがいなくなった後、使徒職は消滅しましたか。


初代の使徒たちがいなくなった後も、使徒職は存続していました。使徒職は、イエス・キリストが御自分の教会のためにお立てになった職務です。地上で使徒職に就く者がいなくなっても、キリストによって立てられた使徒職は存続したのです。


使徒は世の終わりまでキリストの証人となります(マタ29:19-20参照)。キリストの再臨を見据えたこの職務を包括的に全うするため、イエス・キリストはこんにちにおいても使徒をお遣わしになっているのです。

「世の終わり」:マタイによる福音書28章20節のギリシア語原文では、アイオーンという語が使われています。この語は時代すなわち長期間、さらに「世の終わり」を表す場合もあります。これに似たものとして、使徒言行録1章8節には「地の果て」という表現がありますが、これは地理的な意味です。

448 使徒の活動が中断した時代は、どのくらい続きましたか。


聖書以外の文献によれば、初代使徒の中で最後まで残ったのはヨハネで、彼は紀元1世紀終わり頃に亡くなっています。そして19世紀に使徒職が再興するまで、使徒の活動は中断することになります。


使徒職の再興:問400→, 603→を参照

449 使徒の活動が中断したのはなぜですか。


使徒の活動が中断した原因は、神の御旨にあります。人類にとっては謎のままです。


しかし、使徒がいない時代においても、聖霊の活動は継続し、福音は着実に保護され、伝播(でんぱ)していきました。

450 使徒職が再興したのはいつですか。


花嫁の会衆を最後に集めて、彼らをキリストの再臨に向けて準備させる時期がやって来ると、神の御旨に従って再び使徒職に就く人物が現れました。すなわち1832年に、使徒職が再興されたのです。


このようにして、使徒は、花嫁の会衆を用意するために、キリストの教会の黎明期とキリストが再臨される前の時代に活動します。

 

花嫁の会衆:問562→以降を参照

使徒職に『就く人物』という用語を用いるのは、使徒職の担(にな)い手がいることを表すためです。彼らは使徒職に召されて、イエス・キリストの御心によって使徒の職務を行います。

451 神による贖いの業が始まった時の使徒職と終わる時の使徒職との間に、霊的権限の面で違いはありますか。


いいえ。両者とも同じ霊的権限を与えられていますので、任務の面も活動の面も違いはありません。使徒職は、イエス・キリストが御自分の教会のために、唯一一度だけ制定された職務です。


神 / 主による贖いの業:問386→の解説を参照

452 新使徒教会における職階と教役職は、どのようになっていますか。


新使徒教会では、霊の力の違いによって、使徒職、司祭職、執事職という三つの職階があります。

 

  • 使徒職とは、主使徒、教区使徒、使徒です。
  • 司祭職とは、監督、教区長老、教区伝道師、牧者、伝道師、牧司です。
  • 執事職とは、執事、執事補です。

 

権限(の付与):問412→, 415→, 415→の解説を参照

453 使徒職の義務は何ですか。


イエス・キリストは使徒たちに「つなぐこと」と「解くこと」を委託されました(マタ19:19)。これは言い換えれば、やっていいこととやってはいけないことを判断して公(おおやけ)にするということです。そうすることによって会衆の中に教えが築かれ、秩序がもたらされます。


使徒は、イエスを模範として従う、僕(しもべ)です(ヨハ13:15参照)。会衆の信仰を支配するのではなく、むしろ会衆の喜びのために協力し(二コリ1:24参照)、キリストに従うことにおいて模範となるべきです(一コリ1:11参照)。

454 使徒職の権限はどこからもたらされますか。


使徒職の権限は、イエス・キリストによって使徒が召されることと、主が使徒職に据えられた力からもたらされます。使徒が重要な職務であることは、イエスによる執り成しの祈りの言葉からわかります。「あなたがわたしを世につかわされたように、わたしも彼らを世につかわしました。また彼らが真理によって聖別されるように、彼らのためわたし自身を聖別いたします」(ヨハ17:18-19)。

455 使徒の働きには、どのような目的がありますか。


使徒の働きには、主による贖いの業を発展拡大させ、それを完成に至らせるという目的があります。その目的の一つとして、イエス・キリストから指示された方法でサクラメントを施すことがあります。使徒は、福音をゆがめることなく宣教し、会衆が天に受け入れていただけるように注意を払います。


また使徒たちは、福音を宣教し、罪の赦しを宣言し、水と聖霊によってバプテスマを授け、聖餐を執り行うことによって、主の再臨に花嫁を備えさせる必要があります。


主による贖いの業:問386→の解説を参照

456 使徒職は、キリスト教会全体に与えられていますか。


はい。使徒職はキリストの教会全体に与えられています。この使徒職には、すべての人々にイエス・キリストによる救いを提供する任務が与えられています。使徒パウロは自分の任務について次のように述べています。「主はわたしたちにこう命じておられるからです。『わたしは、あなたを異邦人の光と定めた、/あなたが、地の果てにまでも/救いをもたらすために』」(使徒13:47)。


救いは、神の御子によってのみ可能です。使徒たちは、キリストが再臨される時まで、言葉とサクラメントとによって、救いを与えます。

457 主使徒職の基本は何ですか。


主使徒職の基本は、イエスがペトロの職務を制定された際に与えられた職務です。イエスはシモン・ペトロに次のように言われました。「あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。陰府の力もこれに対抗できない。わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる」(マタ16:19-19)。

「ペトロの職務」は、イエス・キリストが使徒ペトロに対してお与えになった基本的職務です。このペトロの職務には、キリスト教会に属す者たちの世話も含まれています。これについては、イエスがペトロに「わたしの小羊を飼いなさい。[…] わたしの羊の世話をしなさい」と仰せになった通りであります。「鍵という権限」も、ペトロの職務の一つであります(問458→を参照)。

458 主使徒職はなぜ「岩という職務」と呼ばれるのですか。


イエスは使徒シモン・ペトロが、御自分の教会を建てる土台であるための「岩」である、と言われました。こう表現することによって、ペトロの職務 ― 岩という職務 ― とキリストの教会との間に、切り離せない関係を結ばれたのです。こんにち「岩という職務」は、主使徒が担(にな)っています。

「ペトロ」とはギリシア語で「岩」を意味するペトロスという語の変形です。岩とは力強さ、不変、堅忍不抜を象徴する語で、主イエスは山上の説教でもこの岩のたとえを使われました(マタ7:24-25参照)。

459 主使徒の務めは何ですか。


主使徒は使徒たちの一致を維持します。使徒たちを力づけ(ルカ22:32参照)、キリストの羊の群れの「世話」をします(ヨハ21:15-17参照)。福音が正しく宣教されるように配慮をします。聖霊を通じて、教会の教えにある新たな真理や相互の関係を悟り、またそれを統一して広めていく責任を負います。さらに、キリスト教会の秩序を構築します。


これらすべての義務は、主使徒職が持つ「鍵という権限」です。


主使徒は使徒を叙任します。使徒たちと一緒に教会を導きます。

「また、彼らのためだけでなく、彼らの言葉によってわたしを信じる人々のためにも、お願いします。父よ、あなたがわたしの内におられ、わたしがあなたの内にいるように、すべての人を一つにしてください。」 ヨハ17: 20-21

「わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる。」 マタ16: 19

460 教区使徒の義務は何ですか。 


教区使徒は、使徒の職務に加えて、指定される活動地域(「教区使徒の担当教区」)の牧会とそこに属する会衆の世話を、責任をもって行います。教役者に霊的な素養を身に着けさせることも教区使徒の責任です。

教役者にとって「霊的な素養を身に着ける」とは、司祭職や執事職が持っている権限を、その司祭職や執事職を遣わす者の考える通りに行使するために、職務遂行のための職能や神の祝福を受けることを意味します。

461 教役者に霊の職務を命じるのは誰ですか。


霊の職務は、人の意志ではなく、天の御旨に基づいて指示されます。神の御旨を理解し、御旨に従って行動することが、使徒の務めです。

462 『叙任』とはどういう意味ですか。


『叙任』とは、霊の職務を授けることです。叙任はサクラメントではなく、祝福行為の一つです。

 

サクラメント:問472→以降を参照 / 祝福行為:問660→以降を参照

463 叙任はどのように行われますか。


叙任は、三位一体の神の名において、使徒によって執(と)り行われ、具体的には按手(あんしゅ)と祈りが行われます。教役者は、使徒職と密接な結びつきを持つことによって、はじめて職務を行うことができます。

464 叙任が執り行われている間、どのようなことが起きていますか。


叙任が執(と)り行われている間、神の祝福が分け与えられます。職務に召された者は、それに就くために聖別を受けます。そして、執事職、司祭職、使徒職それぞれの職務に応じた権限が、使徒職から与えられます。教役者は、決められた範囲における職務遂行を委託されます。


聖別:問417→を参照

465 叙任を受けた段階で、どのような義務を負いますか。


叙任を受ける教役者は、信仰に忠実であることによって、神に従順且つキリストに従うことを、使徒の前で誓約します。

466 霊の職務を果たすには、どうすべきですか。


霊の職務に就く者は、振る舞いや霊的能力の面で一定程度の条件に適った生活をしなければなりません。教義に精通し、信仰に堅く立ち、与えられている任務を自覚し、職能を担(にな)い、秘密を守り、正直になり、自発的に犠牲を払い、謙虚になることは、その一部であります。教役者は、すべてにおいて、イエスを模範とすべきです。


教役者は、受けた職能が発揮されて会衆の利益となるように、叙任の際に受けた祝福と聖別とを通じて委託されたことを実行しなければなりません。


霊の職務に召された者は、自分が神の僕(しもべ)であり手足であることを自覚します。

467 教役者の任期はいつまでですか。


通常、定年による引退をもって公職は解かれますが、教役者の職そのものに変化はありません。辞任や解任の場合は、その職も解かれます。

468 すべての教役者が果たすべき義務とは何ですか。


キリストの福音を宣べ伝え、弁護する義務が、すべての教役者にあります。担当する教会員を牧会し、教会員の信仰を促進させます。さらに教役者として、教会員たちの個人的な問題を自分の問題として受け止め、彼らが日常生活で抱える重荷を共に背負います。


牧会:問688→以降を参照

469 司祭職が果たすべき義務とは何ですか。


司祭職には、洗礼を施(ほどこ)すこと、罪の赦しの宣言を行うこと、聖餐を聖別し施すことを委任され、権限として与えられています。また司祭職には、礼拝や葬儀を司式したり、祝福を司(つかさど)ったり、教会員の牧会を行ったりする任務もあります。


洗礼:問404→, 481→以降を参照 / 罪の赦し:問507→, 629→, 644→以降を参照/ 聖餐:問494→以降を参照 /

祝福行為:問660→以降を参照 / 葬儀:問685→以降を参照

470 執事にはどのような任務がありますか。


執事は様々な面で会衆を支援します。また、会衆の牧会をする牧司を補佐することも執事の仕事です。礼拝で御言葉の宣教を補佐することもあります。

471 任命とは何ですか。


任命とは、厳密に指定された任務を行う担当者を指名することです。任命は、任務を行う期間や場所を限定する場合があります。


霊の職務との関連における「任命」の場合には、会衆主任、教区主任、教区使徒補佐、主使徒補佐に指名することを指します。これらの任命は、叙任と同等ではありません。教役者としての活動期間に制限はありませんが、活動が終了すれば任を解かれることもあります。最長で、教役者として定年を迎えて引退をする時です。


会衆や教区における様々な任務を遂行するため、兄弟姉妹も、霊の職務と独立して、特任を受ける場合があります。